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ショーに行く前に、ちょこっと今回のイタリア訪問で感じた雑感。
中世の趣を色濃く残した街並みは変わるよしもなく、イタリア的なものは常にイタリア的。そんな彼の地において、外観的にもっとめまぐるしく変わっていくのが、街を走る車やオートバイ、そして人々のファッション。

20年前まで自動車鎖国だったこの国では、路上を埋め尽くさんばかりに走り回っていたFIAT500(チンクエチェント)はすっかり影を潜め、今ではヨーロッパ中の最新自動車に加え、日本やアメリカ、韓国などの多彩な国籍を持った自動車が元気に走り回っています。これは、現在とても活況なユーロ市場の動きとも大いに連動するところ。イタリアはもはやヨーロッパの一国家ではなく、ユーロ圏の一翼を担う存在になりつつあると思わせる変化です。ユーロが始まって以来、人もお金も物も国境を越えてヨーロッパ中がひとつになっていく様は、なかなかダイナミックな変化です。

モータサイクルについても、かつてはアリンコのように街中を走り回っていたCiaoやSiといったモトリーノ(自転車ペダル付の原付)はほとんど見かけることもなく、新型のスクーターに刷新されました。オートバイ好きから見ると、とにかくものすごい数のスクーター達が路上を走り回り、そこら中の街角に停めてある姿はなかなか興味深いものがあります。スクーターの種類もイタリア製のものから日本製まで、排気量も50ccからビッグスクーターまで何でもあり。もともとコミューターとしてのスクーター文化の国ですので、驚くことはないのですが、老いも若きも自然にモータサイクルと付き合うこの環境は日本とはまたひと味違う趣があります。
日本ではスクーターといえば、ともするとちょっとやんちゃなカスタマイズをされて、爆音と共に走り去るイメージもありますが、こちらで見かけるスクーターはもっとずっとオトナっぽく見えます。それでいて、通勤や買い物の足として乱暴に使っているというのでもなく、ライダーはきちんとオートバイ用のファッションに身を包んでいるし、ヘルメットも最近流行のややかぶりの浅いジェットヘルメットからフルフェイスまで、しっかりとした装備です。さすがに半キャップは見かけませんでした。

特にここ数年、ライディングウェアと一般のファッションの境界線がほとんどなくなり、むしろオートバイ用のジャケットは流行のファッションの最先端にあります。数年前に大ブームとなったBellstaffをはじめ、BREMA、TUCANO URBANOあたりのジャケットを着た人々は、老若男女、オートバイに乗る乗らないにかかわらず、街中でたくさん見ることが出来ますし、その姿はしっかりと古い街並みにとけ込んで見えます。
アウトドアウェアがファッションの中で重要な位置を占める中、モータサイクル用のウェアもそれに並ぶ機能とファッション性を取り入れてきましたので、これも自然な流れなのかもしれませんが、本来オートバイ用につくられた機能性を、自然に生活の中に取り込める感覚は、モーターサイクルと身近に暮らしていることの証なのかもしれません。ヨーロッパの最新ファッションに興味のある方は、是非この辺のブランドも要チェックですよ。

さて、それでは去年から会場をさらにミラノの郊外に移したミラノショーに進んでみましょう。
ヨーロッパのモータショーは現在激しい競争状態にあります。かつてはミラノショーといえば隔年でミュンヘンやケルンと開催されるビッグイベントでしたが、これらのショーが、それぞれの地位向上と拡大をねらって共存の時代から競争の時代へと変わってきています。
そんな中でミラノショーは開催時期も一番おそく、そういった意味ではやや後手を踏んでいる感じも否めない気もします。
しかしイタリアはヨーロッパ最大のモーターサイクル大国です。この小さな国には今でも驚くほどの大小様々なオートバイメーカーが存在し、世界中の注目を集めています。DUCATI、CAGIVA、PIAGGIO、APRIRIA、MOTO GUZZIといったビッグネームから、bimotaやtmなどのコアなメーカーまで数え上げたらきりがありません。
なのでやはりショーの主役はこういったイタリアのバイクメーカーでした。


 イタリアのオートバイといえば、日本ではともすると「トラブルメーカー」的なとらえられ方をしている向きもあるかもしれません。それはホンダ、ヤマハといったビッグメーカーが、果て無き品質の向上を追求する中で、あまりに高い次元に至ってしまったことにも一因があるかもしれません。こういった動きの中で、メーカーとしてホンダ、ヤマハほどの規模を持たないイタリア勢は、得意のデザインの分野で優位に立とうとしてきた感があります。
しかし、モーターサイクルのデザインとはそもそもなんなのか?この質問に対する答えは、実は複雑でとても奥が深いものだと思うのですが、ちょっと乱暴に言い切ると、彼らが考え出したのは、「ライフスタイルの提案」そのものだといえるのではないでしょうか?

 DUCATIのブースにいけば、シックな雰囲気の中、最新型の1098がとてつもなくレーシーな雰囲気で佇んでいます。真っ赤なカウリングに実を包んだその車体は、明らかにチョイノリ気分のライダーを威嚇しているように見えます。
APRIRIAのブースではSVXに、新しいオフロードバイクのスタイリングという発見が出来ます。これまでスペック指向で進んできたオフロードバイクにも、最新のデザインアイデアを投入すると、これほどもまでに新鮮なモーターサイクルが創れるのだという感激さえ沸きます。
MOTO GUZZIは、伝統的な横置きVツインに拘りながらもそのエレガントなスタイルにカジュアルさをプラスし、MV AGUSTAはさらにゴージャスになり、GILERAはフロント2輪のスクーターという新しい発想を打ち出してきました。
そのどれもが、自らの主張を惜しげもなく強調し、アイデンティティの確立を揺るぎないものへとしていきます。
グローバリズムの中で、大波に飲み込まれないようにするために、イタリア人が身につけた「特別であること」というこの自己主張は、とどまることなく、さらに情熱的になっているように見えました。
モーターサイクルとして、そのスペックだけで見てしまえば、これらのオートバイは、すべて日本のBIG-4に簡単に肩を並べられてしまうばかりか、凌駕されてしまうことさえ充分あるのですが、だからといって宝石のように輝くこのマシン達の魅力は全くうすれることがありません。

 今回、イタリア勢以外は他のショーですでに新車を発表していたり、そういう意味ではショッキングな発表は少なかったかもしれませんが、いくつかピックアップ。

 新しくなったミラノショーの会場は、とにかく広い。端から端まで歩くだけで大変です。そんな広い敷地を利用して、野外では様々なエキシビジョンも開催されました。初日はなんとエンデューロ!本来は自然の地形を利用して行われることの多い競技ですが、いわゆるエンデューロクロスというか、スタジアムエンデューロというか、つまり人工的に配置されたセクションを置いての周回レースです。
丸太ゴロゴロ、岩ゴロゴロ、プールもあります。見るからに凶暴なセクションでしたが、実際走ってみると上手なライダーはスタンディングで軽く越えていきます。さすがにレベルが違う。
いくつものクラスがあり(インターナショナル、KTM杯、アプリリア杯)それぞれにA、B(ジュニア)クラスも設定されて予選、敗者復活戦、そしてレースと一日中やってました。
翌日は豪快なスーパークロス。そしてモタード、トライアルと続くなど、オフ系のイベントが目白押し。もちろんフリースタイルなどもレースの合間にきっちり登場。このエキシビジョンだけ見ていても、全く飽きることがありません。

 イタリア人は趣味を持っている人という意味でよくpassionato(情熱家)という言葉を使います。「彼はオートバイのパッショナートなんだよ」っていうふうに。日本人から見ると少々大げさに聞こえるこの表現も、彼らにとってはごく当たり前のことなのだと思います。人生を楽しむことにかけては、ずば抜けた才能を持っている彼らが、ひとたび何かに興味を持って接すれば、そこに情熱がふつふつと沸いてくるのは当然のことなのでしょう。
古い街並みを愛し、頑固で保守的なのに新しいものが大好きなイタリア人。モーターサイクルは、そんな彼らにとって、人生を楽しみ、そして豊かにするための大切な道具のひとつなのだと、改めて考えさせられる日々でした。



<victor>
気がついたら3年ぶりのイタリア。今回は都会にはほとんど出かけず、もっぱら郊外を中心に訪れたけど、次に来るときは、ゆるやかな丘陵地帯をのんびりバイクで走りたいと思いました。