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ガエルネ訪問レポート 【ファクトリー篇】

UPDATE : 2020.01.24

ファクトリー訪問

モダンなデザインのオフィスルームを通り過ぎて、扉を開けるとそこには決して大きいとはいえないけど、実に様々な機械と職人達が、ブーツを作っています。だいたい人数は2、30人ぐらいといったところでしょうか?老若男女、いろいろな人が、ラインをつくりながら、整然と並んでいます。よく見るとけっこう高年齢の人も多く、いかにも熟達した職人風の、しわの刻まれた人もたくさんいます。

一番手前は、大きな革をブーツのパターンに合わせて、裁断するところ、この人の腕前は、ひとつの革から、どこまで、合理的な裁断を行えるかにかかっているということです。洋服の生地と違って、革はどれも不定形な上に大きさも違うので、それを見誤ると、とんでもない無駄を生んでしまうからです。もちろん革はどこでも同じではないので、そのあたりも見ながらの作業になります。
さらにその革をブーツの形に整形するために、いろいろと下仕上げが施されます。

いくつかのブーツの部分が、整形されると、そこにひとつずつ、バックルなどの金具類が取り付けられます。このあたりの作業は、比較的女性が多かったですね。

実際にブーツらしくなるのは、縫製が始まる段階からです。このあたりは、ミシンによる手作業です。まずはブーツのスネのあたりから、縫い合わせていきます。ここもまた、女性の仕事場のようでした。久しぶりに聞くミシンの音は、私にはなぜか心地よいものです。

おおよその部分ができあがると、それらを縫い合わせるのは、かなり特殊な機械達です。ガエルネのブーツを手にした人なら、どのブーツも表の革や、裏地、何重にもなった靴底などが、複雑に重なるように縫い込まれていることにお気づきでしょう。このように、厚い革をいっぺんにいくつも合わせて縫うのは、かなり力のいることです。そのあたりは、きっと昔は畳屋のオヤジよろしく、はちまきして太っい針で肘を使いながら縫い合わせていたことと思うのですが(多分)、今では、専用の機械がそれをやってくれます。

でも、機械がやるといっても、それは、あくまでも特殊なミシンといったようなものであって、右に材料を入れれば、左から製品がでてくる、というようなものでありません。その機械の達人が、ひとつずつ、慎重に作業を進めています。靴底や、いくつかの部品は接着剤も使います。これも、ひとつずつ刷毛で作業されます。でも、この接着剤、あまりシンナーくさくなかったな。
こうして、ラインを流れながら、ブーツはひとつずつ、というよりちゃんと一足分ずつできあがっていきます。接着剤の乾燥が終わったものから、最後の仕上げにかかります。余分な革を取り除き、何度も成型し、丹念な仕上げを施されて、最後にもう一度金具類が、全て取り付けられて、検品係の人の元にたどり着きます。ここでまた、さっきのエルネストに会いました。やはり製品の出来具合が気になるようです。でも私がカメラを向けると、自分ではなく、仕事をしている職人達を撮れといって、どこかに行ってしまいました。

こうして、みなさんが手に(足に?)しているブーツは何人もの手を経て、実に丁寧に作られていました。ブーツは決して、安い商品とはいえません。それに、一度使ったら捨ててしまうような消耗品でもありません。足になじんだブーツは、たとえ少しぐらい壊れても、修理して使っていきたくなるものです。そのためにガエルネでは、リペアパーツも充分に用意しています。もちろん壊れたら買い換えてくれた方が、会社は儲かるはずです。でも、せっかく丹誠込めて作ったブーツが気に入ってもらえるのであれば、修理して永く使い続けて欲しいというのが、職人達の願いでしょう。それでも、激しいライディングの後に、寿命がつきたなら、もう一度ガエルネ製を手にしてもらえるという自信があるのだとも思います。

 

ハンドメイドという意味

なぜか私たちは、工場で作られるものは、どれも同じで無機質なものだ、と決め込んでいるような暮らしをしています。それが、どういう人間の手によるものかなど、普段はあまり気に留めません。でも、こうして実際に仕事をしている人々を見ると、その考えがとても間違っていることに改めて気づかされます。


職人の顔、職人の手。

仕事の最中におじゃましたにもかかわらず、職人達の手は、一瞬も休まず動き続けていました。カメラを向けても、いやな顔ひとつせず、黙々と仕事に打ち込む姿は感動的でもありました。あとで、撮った写真を見ると、多くの写真で職人の姿は映っているのに、その手はハイスピード動いているために流れてしまっていました。その素早い動きのひとつひとつが、クラフトマンシップとはこういうものだと、語っているようでした。
ちなみにジャペックスでは、ガエルネとの連携は単に輸入代理店という関係ではなく、様々な技術的な意見交換や、製品化までのプロセスに大きく関わってきています。そうやって、いくつもの日本専用モデルさえ生み出されています。例えば、今やガエルネの代名詞ともいえるED-PRO、これはまさにジャペックスとガエルネの緊密なコラボレーションの結晶ともいえるモデルです。その品質は今や世界の求めるところとなり、今年からワールドモデルとして世界中のオフローダーに供給されています。彼らのクラフトマンシップに対する良き理解者であり、職人ひとりひとりとも、名前で呼び合うコミュニケーションがあって、はじめてこうしてファクトリーの中を歩き回ることさえ許されるのです。

 

MEET THE WORLD

伝統の技術と歴史、現代のハイテク化されたモーターサイクルの世界にあって、それでもなお、手作りにこだわり、それ故に評価されるブーツづくり。身につける道具としては、もっとも複雑で、様々な要素が求められるものでもあります。より、堅牢で、より生身に近く、そして充分な機能を持ち合わせなくてはいけません。そしてそれを実現するためには、単に見た目の出来不出来だけでなく、小さな作業ひとつずつに、魂を込めるような方法しかないのかもしれません。スローライフ運動発祥の地であるイタリアならではの、昔ながらのやり方が、今世界中のライダーの足元を守っているというのは、何とも素晴らしいことだと思うのです。やりがいのある仕事、とはこういうものかもしれません。そんな誇りが、彼ら一人ひとりから感じられたというのは、いうまでもないことです。
ディストリビューターとしてのジャペックスは、単にモノを売るだけの関心しかない会社ではありません。ガエルネがそうであるように、そこに含まれるとてつもなく豊かな事柄を、多くの人々と共有することが、一番の使命なのではないかと考えているのです。


丘の上からマゼールを見下ろす。手前はブドウ畑。

出来れば今度、ガエルネのブーツを手にとって、一度じっくり眺めてみてください。単にブーツの形をしたオブジェではなく、ちょとしたディティールに目がとまったら、その仕事のひとつずつが、北イタリアの、トレビーゾの、マゼールのイタリア人の、男や女の職人達の手仕事の結晶なのです。あなたのモータサイクルライフが、世界と、歴史に繋がる瞬間ですよね。


ガエルネ創業者のエルネスト・ガッゾーラ

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※こちらの記事は、2003年に “JAPEX CAFE” に掲載された記事を元に作成しています。